既存建物を再利用した土地活用(2)

前回に引き続き、既存建物による土地活用についてをお話しします。今回は独身寮から有料老人ホームへの改修工事による実例をご紹介致します。

1990年(平成2年)頃から3~4年間バブル景気で大手企業が、新入社員獲得のため新入社員用の独身寮用地を探していました。既存寮の売買もありましたが、設備などの老朽化で人気はありませんでした。
またバブル景気のため土地評価は上がる一方、相続税対策のために独身寮建設に動いたケースもありました。
2009年(平成21年)から少しずつ寮に空室が目立ち始め、空室の独身寮を活用出来ないかとの話が多くなりました。バブル崩壊後、大手企業は新入社員の数を絞り、耐力温存の方向に向かい、当時30年だった借上げ期間も20年へと短縮しました。

小平市に大手企業の独身寮をお持ちのオーナー様も企業側が撤退をしたために空室となり、建物の再利用に苦慮されていました。
介護運営会社の紹介により、有料老人ホームに改修できないかとのお話をいただき、現地調査を行いました。
部屋の面積は狭いものの個室となっており、水回りの追加(手洗い・トイレ)、食堂が狭いため増築、大浴場は手摺をつけ段差を無くしバリアフリー、車椅子対応のエレベーターを新たに設置などなど、「東京都有料老人ホーム設置基準の既存建物利用仕様」に対応可能と判断し、基本計画へと運びました。運営会社の借入条件(賃貸借契約の精査)や建築工事の見積りが整い、オーナー様へプレゼンを行ない、事業はスタートしました。工事費は新築工事と比べると1/3、工事期間は約5ヶ月、建物の改修という事もあり、家賃目線は低いものの総事業費からの利回りは12%を超えました。20年以上の賃貸契約で現在も満床稼動中です。

まとめ

既存建物の事業リスクは、既存建物に残債がある場合に融資までの時間や融資額の上限が低い場合があり、総事業費が不足する場合です。
また工事中のゼネコン会社の倒産や運営会社の撤退・倒産などのリスクもあり得ます。既存建物の再利用となると、出店可能な運営会社も限られ、家賃も若干安めとなりがちです。しかしながら使用可能な建物がある場合、再利用にて長期運営が考えるのは有益な土地活用と言えます。

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